犬が自分の手や足をなめるのは何故?止めさせた方がいいの?

愛犬が自分の手足をずっとペロペロなめている、手足の先や肉球が赤くなっている、そんな状態に気が付くことがあると思います。

犬が自分の手足をなめ続けることを、そのままにしても良いのでしょうか?実はこの行為は、そのままにしておくと色々な弊害が出てくることがあります。今日は愛犬が足をなめる原因と、その対処法をお伝えします。

犬の「なめる」という行為とはどのような意味?

犬が人間の口元をペロペロとなめる行為は、甘えと信頼を表す行動です。また人の手をなめる時には、主に遊んで欲しい気持ちや、撫でて欲しいなどの要求を表します。

では、犬が自分の手や足をなめるのにはどのような意味があるのでしょうか?犬にとって自分の体をなめるという行為には、気持ちを落ち着かせる意味や、ストレスを無くそうとする意味があります。

寝る前におしゃぶりのように手をなめながら眠りにつく犬や、ご飯を食べて満足した犬がうっとりと手をなめている姿を見た方もいらっしゃると思います。

このように、一時的に手足をなめるだけで、長く続けることがない場合には気にする必要はありませんが、疾患や何かしらのストレスによりいつまでも手足をなめ続ける場合には、その原因を特定し、取り除いてあげる必要があります。

「なめる」が表す2つのサインと対処法

犬が自分の手足をなめ続けて止めない時に、なめている部分に赤みが出てくる、傷ができる、出血が見られるなど明らかな異常がある場合には注意する必要があります。

そしてその原因には大きく分けて「体の健康」と「心の健康」の2つがあります。この後述べる2つのチェックポイントを参考に、なめる行為に問題が隠れていないかどうか、確認してみましょう。

「体の健康」~犬の体の健康状態を確かめよう~

犬が一見健康そうに見えても、見つけにくい場所に外傷や腫瘍がある時や、皮膚炎を起こしている場合があります。

まずはなめている部分をよく観察し、傷や腫れが無いか確認してみましょう。また手足だけではなく、以下のポイントで全身を観察してください。

・フケが出る
・抜け毛が多く、ハゲができる
・かゆみが体にまで広がる
・指の間だけではなく、耳の内側や目の回りなど毛の薄い部分にも赤みが出る

このような症状がある場合は、健康面から何かしらの疾患を発症している可能性が高くなります。次に疾患の中でもよく見られる、代表的な原因と対処法を紹介します。

衛生面が原因の場合

特に多いのが自宅でシャンプーをする際に、すすぎが不十分で手足の指の間にシャンプーや水分が残り、指間炎という炎症を起こしてしまうパターンです。

また、お散歩などで足が汚れる・濡れた後にきちんと拭き取りがされず、指の間がジメジメした状態が続くと、雑菌が繁殖して指間炎を起こすことがあります。

そして外を散歩する際には、除草剤や薬品が撒かれている場所を知らずに歩いている事もありますので、散歩から帰ったらしっかり手足を拭くことと、足の裏の毛はできるだけ短くカットして清潔にしておくと良いでしょう。

生活環境、犬の体に触れるものが原因の場合

よく言われるのは、シャンプーの成分が犬の体質に合わずにアレルギー反応を起こしている場合です。シャンプーをした後にフケが良く出る、体を掻いている時はシャンプーを低刺激性の物に変えてみる、病院などで処方される薬用シャンプーを使ってみると良いでしょう。

他にも普段寝ているベッドや着ている服の素材など、皮膚に直接触れるものにアレルギー反応を起こしている可能性もあります。必要以上に服を着せないようにする、ベッドの素材は変えるか、思い切って使用を中止するなど対応してみましょう。

食物アレルギーが原因の場合

特に注意したいのが犬に多いと言われる食物アレルギーです。ドッグフードの種類を変えた、ドッグフード以外のオヤツや食べ物を食べたら手足をよくなめるようになった、といった心当たりがあれば食物アレルギーが疑わしくなります。

この場合病院でアレルギーの血液検査などを行いますが、この結果の出方は非常に不安定で、原因を特定するのはなかなか難しいのです。

そこでアレルギーの出にくい魚を中心にした、アレルギー対応フードに変える、手作り食で原因が何かを探すなどの手段がありますが、自己判断では栄養面での片寄りを起こすことがある為、必ず獣医師の指示に従って対応していきましょう。

アトピー性皮膚炎が原因の場合

人間と同様に、犬にもアトピー性皮膚炎が発症することがあります。原因はハウスダストやカビ、花粉など色々なものがあり、春夏に症状が悪化する事が多いため、普段は手足をなめないのに、季節によって手足をなめる症状が強く出る場合はアトピーの可能性が疑われます。

アトピー性皮膚炎の診断は、血液検査によってある程度明らかにすることが可能です。そして治療についてはステロイドを使用することもあり、非常に慎重な対応が必要ですので、素人判断せずに必ず病院で診察を受けましょう。

またアトピー性皮膚炎が遺伝的にかかりやすいと言われるペットで人気の犬種を、いくつかあげておきます。

柴犬
ゴールデンレトリバー
トイプードル
ミニチュアダックスフント
シーズー
フレンチブルドッグ
ミニチュアシュナウザー
パグ

「心の健康」~なめる原因はストレスにあり?~

皮膚の疾患やアレルギーなど、健康面での問題がない場合は、精神的なストレスが原因の可能性があります。
ストレスが原因となって手足をなめる場合でも、これが続くと指間炎という疾患を起こす可能性がありますので注意が必要です。

また犬の心の健康状態が改善されれば、飼い主さんとの関係も良いものになります。これから述べる3つのチェックを参考に、確認してみましょう。

十分な愛情を与えていますか?

犬は本来群れで生活する生き物ですが、ペットとして飼われる犬は日中1人で留守番をしている事が多くなりがちです。

おとなしくしているから、問題行動を起こさないから、と安心していても、実はとても寂しくてストレスを感じているのかもしれません。

犬が手足をなめているのを見ても、叱ったりせずに構ったり遊んであげるようにしましょう。

成長に合わせた接し方をしていますか?

子犬から成犬、成犬から老犬という犬の成長に合わせた接し方も大切なポイントです。たとえば犬の健康的な睡眠時間は、成犬の場合12~15時間、子犬や老犬になると20時間弱と、とても長い睡眠時間が必要になります。

かわいいからと犬が休む暇もなく構い続ける事や、夜遅くまで明るい部屋に置き、犬が眠れずにストレスを貯めてはいませんか?

子犬は構い過ぎず、成犬は遊びや散歩の時間を充実させる、老犬は健康状態を見ながらゆっくりと過ごせるように加減して接しましょう。

運動量は足りていますか?

「忙しくて散歩にいく時間がなかなか取れない」「小型犬だから家で運動できるし散歩はいらない」という話も良く聞きます。

犬にとって散歩とは、体を動かす運動と共に、外の空気や季節を感じ、他の人や犬との交流を楽しむ、色々な経験を学習する大切な時間です。

その為人間と同様に、何も刺激がない家の中で引きこもった生活をさせてしまうことで、社会性が養われず、強いストレスを貯めることがあります。

またのんびりと歩くだけの散歩では、体力のある若犬や大型犬では十分な運動量が得られません。犬の年齢や体格に合った運動の時間を、散歩だけではなくドッグランや自宅で作ってあげましょう。

但し犬の性格や体調によっては、散歩が長すぎても短すぎても反対にストレスになってしまう場合もありますので、個々の犬の性格や大きさに合った形で、十分な散歩や運動を与えてストレスを減らす事で、手足をなめつづける行為を止めることができます。

なめるからエスカレート?手足や爪を噛んでしまう場合

手足をなめているだけかと思ったら、カチンカチンと音がして爪を噛んでいた、と言うこともあるかもしれません。

爪が伸びすぎている場合には、犬が気になって噛んでしまうこともある為、常に短く切りそろえるようにしましょう。

さらに手足を血が滲むほど噛むなど、なめる行為からエスカレートする場合には、傷口から感染症を起こしてしまう事もある為、原因を探りつつ、エリザベスカラーを付ける、靴下を履かせる、また手足に犬が嫌がる味がするビターアップルを塗るなどの対策をしましょう。

しつけで直せる?手足をなめる癖

健康上も問題がなく、生活面でも十分な対応ができていても、手足をなめる事が癖になってしまい、止めることが難しい場合もあります。

そんな時にしつけでなめる事を止めさせる事は可能でしょうか?ここでは手足をなめる癖を緩和する為のしつけについていくつかのポイントをお伝えします。

叱らずに褒めるしつけで愛犬と飼い主さんの絆を深める

手足をなめているのを見て、心配のあまり「コラ!ダメでしょ!止めなさい!」などと叱っていませんか?
叱ることは犬に強いストレスを与えますので、なめている行為を叱ると、さらにストレスを感じるようになり、今度は飼い主さんに隠れてなめるようになります。

また女性やお子さんの高くてやさしい声で叱ることは、犬にとって「褒められている」と勘違いする事もありますので、よりなめ癖が強化されてしまう場合があります。

叱るのではなく、褒める場面を多く作り、手足をなめるよりも飼い主さんに褒められたいな、もっと好きになりたいな、と犬に感じてもらうような関係作りをする為に「褒めるしつけ」を意識していきましょう。

手足をなめているのを見かけたときはどうすれば良いでしょうか?

手足をなめているのを見ても、大げさに反応せずに犬を側に呼んでオスワリやオテをさせ、上手にできたら褒めてあげる事で、犬の気を反らしてあげましょう。

大切なのは「手足をなめる」→「何か犬に命令を出す」→「従ったら褒める」という順序を守ることです。

犬に出す命令は、オスワリでもオイデでも構いません。犬がしっかりと従ってできたときには大げさに褒めましょう。

この際に小さくちぎったオヤツなどを与えても効果的です。何もしていないのに褒めてオヤツを与えると、手足をなめると褒めてもらえると勘違いしてしまうことがあるので注意が必要です。

また、こういった褒めるしつけを、手足をなめるのを止めさせる以外にも、自宅や散歩中など色々な場所でランダムに行うことで、犬は常に飼い主さんに注目するようになります。

愛犬との意思疎通ができるようになると、犬との関係がより良くなり、ストレスを減らすことができますので、積極的に行っていきましょう。

アイコンタクトで犬の注目を飼い主さんに向けよう

犬の名前を呼ぶと、犬がしっかりと飼い主さんの目を見る癖を付けることを「アイコンタクト」と呼びます。
これを教えるには、犬が飼い主さんから気を反らしているときに名前を呼び、犬が目線を合わせて来たら、すぐに褒めてオヤツなどを与えて下さい。

これを繰り返す事で、犬は飼い主さんが名前を呼んだら注目すると良いことがあるぞ、と覚えていきます。
このアイコンタクトを利用して、犬が手足をなめるのに夢中になっていても、名前を呼んで注意を向け、ボール遊びなどの軽い運動をして気を反らせてあげましょう。

飼い主さん以外の人がお世話をしても大丈夫な犬に育てよう

10年以上生きる犬をずっと同じ飼い主さんが365日お世話できるとは限りませんね。旅行や入院、引越しなどどうしても犬と離れる期間が無いとは言えません。

手足のなめ癖のある犬はストレスを感じやすい為、せっかく治しても、そういった環境の変化で再発する事があります。

そうならない為にも、飼い主さんオンリーにするのではなく、色々な人にお世話をしてもらう機会を作り、色々な場所に連れて行って環境の変化にも慣れさせ、いつでもどこでも誰とでも健康に過ごせる犬に育てましょう。

最後に

いかがでしょうか?犬が手足をなめ続ける事には、身体的な原因と、心理的な原因の2つがあることがお解りになったと思います。

ずっと手足をなめ続ける事は、犬の体にとってあまり良いことではありません。まずは身体的な原因を疑うこと、そうでない場合は何かしらのストレスを愛犬が抱えている可能性がありますので、愛犬と飼い主さんの関係に問題がないか見直してみましょう。

愛犬がいつまでも健康で楽しく暮らせるように、この問題を解決できると良いですね。