スマートでがっちりとした体型に、愛くるしい表情を持つラブラドールレトリバーは、カナダで生まれた犬がイギリスに持ち込まれ、品種改良の結果誕生した犬種です。欧米各地をはじめ世界中で人気の高い犬種のひとつです。
品種改良の末、ラブラドールレトリバーには様々な毛色があるのをご存知でしょうか。イエローやブラック、チョコレートといった種類があり、毛色で人気や相場が異なります。
さらに、イギリスとアメリカといった国別でもラブラドールレトリバーの違いがあるのです。
今回はラブラドールレトリバーの種類や、外見や名前が似ていることで同じ先祖を持つと思われがちなゴールデンレトリバーとの違いを解説していきます。
1.ラブラドールレトリバーの歴史
種類についてご紹介する前に、まずラブラドールレトリバーの起源や歴史についてご紹介します。
ラブラドールレトリバーの起源は16世紀にさかのぼります。カナダのニューファンドランド島に入植したイギリス人が持ち込んだ犬と、ニューファンドランド島に古くからいたニューファンドランド犬を交配させて、セント・ジョンズ・レトリバーが誕生しました。セント・ジョンズ・レトリバーは、19世紀初頭にイギリスに持ち込まれた後に様々な犬と交配され、ラブラドールレトリバーが生まれたといわれています。
ラブラドールレトリバーがひとつの犬種として初めて認められたのは、1903年のイギリスです。次いで1917年に米国でも認められ、第二次世界大戦頃から人気が高まったとされています。
祖先となるセント・ジョンズ・レトリバーはもともと、ニューファンドランド島で漁で網からこぼれた魚を拾い上げる仕事に従事しており、ラブラドールレトリバーはその能力を引き継いで運搬犬や盲導犬、警察犬など幅広い分野で活躍するようになりました。
家庭犬としても人間との相性は抜群で、賢く穏やかな性格から愛犬家、特に大型犬が好きな人々から最も愛されている犬種のひとつです。カナダとイギリスでは登録頭数がもっとも多い犬種で、世界中で飼育されている犬種の中でも最も多いといわれています。
2.ラブラドールレトリバーの特徴と性格
ラブラドールレトリバーの特徴
ラブラドールレトリバーの一般的な成犬の体重と体高は、下記の通りになっています。
体高
オス:57~62cm
メス:55~60cm
体重
オス:29~36kg
メス:25~32kg
飼い主の狩りを手伝っていたことで、がっしりとした体格を持ち、獲物を捕らえられるように顎が発達しています。毛は短いですが、下毛が発達していることで水中や寒い気候の中でも体温調節がしっかりできるようになっているのです。
ラブラドールレトリバーの身体で特徴的なのが、水かきのついた足です。これは漁で水中を泳いでいた名残です。泳ぎが非常に得意で、泳ぎを教えなくとも自然に泳ぐラブラドールレトリバーの子犬がいるほどです。
肉付きの良いラブラドールレトリバーは、陸の上でも活発に動きます。持久力と脚力に長けており、激しい運動や難しい競技でも華麗な動きを見せます。
がっしりとした体格である一方、顔はおっとりしていて優しい印象を受けます。
ラブラドールレトリバーの性格
性格は飼い主に従順で、他の人間や犬とも良好な関係を築くことができます。好奇心が旺盛な面もありますが、時と場所に応じておとなしくなったり活発に動いたり、非常に扱いやすいでしょう。盲導犬や救助犬としても活躍しているラブラドールレトリバーは、子供や年配の人にも扱いやすい存在です。
ただし、物に執着する傾向にあり、しつけが十分にできていないと家具を破壊されることもあります。子犬の頃のしつけを徹底し、運動を十分にさせてあげることでいたずらをすることはなくなるでしょう。
3.ラブラドールレトリバーの種類
ラブラドールには3種類の色がある
ラブラドールには、一般的にイエロー、ブラック、チョコレートの3種類の色があります。イエローと言っても、白っぽいイエローから赤みの強いきつね色までさまざまですが、大きく分けてこの3つの色が存在します。
今日見かけるラブラドールレトリバーはイエローが多いのですが、ラブラドールレトリバーが誕生したばかりの頃はブラックが主流で、それ以外の色は処分されていたといわれています。
ペットショップやブリーダーでラブラドールレトリバーが販売される際、色で価格が決まることが多く、イエロー、ブラック、チョコレートの順で値段が高くなっていくのです。
ラブラドールレトリバーの色は遺伝子の組み合わせで決まり、そのパターンは全部で9種類にも及びます。
・EEBB/EeBB/EEBb/EeBb:ブラック(大文字のEとBが含まれているとブラックになります)
・eeBB/eeBb/eebb:イエロー(小文字のeeが含まれているとイエローになります)
・EEbb/Eebb:チョコレート(大文字のEと小文字のeeが含まれているとチョコレートになります)
色で性格が違う?
ラブラドールレトリバーは毛の色によって性格に違いがあるといわれています。
イエローのラブラドールレトリバーは、陽気な性格で落ち着いていることが多いとされています。常に穏やかな性格であることから、盲導犬として使われているのはイエローがほとんどなのです。
家庭犬としても3種類の中で最もふさわしく、はじめて大型犬を飼うという方はイエローラブがおすすめです。
一方で、黒ラブとチョコラブはとにかく活発に動くことを好みます。子犬の頃にやんちゃをすることが多く、落ち着かせるにも結構な労力を必要とするでしょう。
ラブラドールレトリバーはほとんど吠えることはないのですが、黒ラブとチョコラブは吠え癖を持つことがあるようです。ただし、しつけをきちんと行っていれば成犬になった頃におとなしくなるケースが多いといえます。
性格の違いは個体によって様々ですが、色によって少しの違いがあると知っていると面白いですね。
シルバーのラブラドールレトリバーがいるって本当?!
ラブラドールレトリーバーの写真を見ていると、シルバーの毛を持つラブラドールレトリバーを見かけることがあるかもしれません。
1950年代まで、シルバーのラブラドールレトリバーが公にされることはなく、その頃すでに生まれていたとしても、おそらく処分されていたでしょう。1950年代にガンドッグの雑誌で「希少なグレーのラブラドール」として、シルバーのラブラドールレトリバーが初めて紹介されました。
シルバーのラブラドールレトリバーがどのようにして誕生するかというのは、明確にされていません。一部の人々の間では、シルバーの毛を持つワイマナラーと交配された結果ではないかと推測されています。
アメリカのケンネルクラブでは、シルバーのラブラドールレトリバーを純粋な犬種と認められておらず、今もなお賛否両論が沸き起こっているのです。
アメリカンとブリティッシュ
色の種類のほかにも、ラブラドールレトリバーにはアメリカンとブリティッシュという違いがあるのをご存知でしょうか。
どちらも3種類の色がありますが、外見においていくつかの違いがあるのです。
アメリカン・ラブラドールレトリバーの特徴
アメリカン・ラブラドールレトリバーはブリティッシュと比較して、下記のような特徴があります。
・スリムな体格ですらっとした印象
・胴と脚が長い
・頭の幅が狭い
・鼻が長い
・しっぽが長い
作業場(ワーキングフィールド)では、米国産のラブラドールレトリバーの方が活躍しているようです。
ブリティッシュ・ラブラドールレトリバーの特徴
・ずっしりとした体格
・頭の幅が広い
・鼻が短い
・首元が太い
・脚が短く体高も比較的低い
英国産のラブラドールレトリバーにはクリーム色が多く見られます。ドッグショーなどの品評会によく出場しているのは英国産のラブラドールレトリバーです。
4.ラブラドールとゴールデンは親戚?
ラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーは名前や外見が似ていることから、系統が同じと思われることが多いのですが、生まれも育ちもまるで違う犬種なのです。
ラブラドールレトリバーの特徴
・幅の広い頭部と目立つ眉毛
・水をはじく短い毛
・筋肉質な体格
ゴールデンレトリバーの特徴
・ウェーブがかかった毛
・より前に突き出た鼻
・笑っているような表情
カナダで生まれたラブラドールレトリバーとは違い、ゴールデンレトリバーはイギリスで品種改良の末に誕生しました。
ラブラドールレトリバーは漁で魚を回収する仕事に従事していましたが、ゴールデンレトリバーは狩猟で獲物を回収していたとされています。
寿命はラブラドールレトリバーが10~13年、ゴールデンレトリバーが10~12年と、ラブラドールレトリバーの方が長生きする傾向にあるようです。
生まれも育ちも違うとなると、かかりやすい病気も異なります。
ラブラドールレトリバーがかかりやすい病気
・眼瞼内反症
・ひざと肘の奇形
・喉頭麻痺
ゴールデンレトリバーがかかりやすい病気
・肘の異形成
・発作
・皮膚疾患
どちらも食欲が旺盛なため、餌をあげすぎると肥満になりやすい体質なのですが、毛が短いラブラドールレトリバーの方が体温を保つために体脂肪率が高くなりやすいのです。そのため、ラブラドールレトリバーにはカロリーの低い食事が適しています。
色の好みやライフスタイルに応じてラブラドールレトリバーを選ぼう!
ラブラドールレトリバーの種類やゴールデンレトリバーとの違いを解説しました。
ラブラドールレトリバーを飼いたいと思っている方は、飼うならどのタイプがいいと考えているでしょう。色や発祥地で性格も違ってくるため、好みの色だけでなくそれぞれの性格を考慮して、家族に迎え入れるにはどのタイプがいいか考えてみるといいかもしれません。
性格は違えど、どのラブラドールレトリバーも、しつけや運動をしっかりしていれば家庭犬として家族と良好な関係を築くことができます。これからラブラドールレトリバーを飼う方は、しつけと運動をしっかり行って、良好な家庭犬になるよう育ててあげましょう。