猫の最高齢記録はギネス記録によると、アメリカのテキサス州の猫で、2005年までなんと38年間生きたそうです。
日本では猫の平均寿命は室内飼いで、16歳程度と言われていますが、
ペット医療の進化や生活環境の変化で、20歳以上生きる猫も珍しくなくなりました。
猫が高齢期を迎えるのが当たり前の時代、我々飼い主も高齢期猫についての知識が必要です。
高齢期は病気になるリスクが上がります。
普段の生活から病気にならないようにするには、高齢期にあったフードに変える事が必須です。
高齢期にあったフードを、早速学んでいきましょう。
1.高齢期に訪れる体の変化
1-1.猫の高齢期は何歳から?
一般的には、11歳からが猫の高齢期と言われています。
猫の11歳は人間の年齢で60歳程度となり、人間でも60歳は還暦を迎え、仕事をリタイヤしたり第一線を退く方も多いです。
とはいえ、現代の人間の60歳はまだまだ若く、猫も同様で11歳を迎えても病気知らずで子猫の様に元気な猫もいます。
1-2.高齢猫に現れるからだのサイン
人間と同様、猫も年を重ねると体に変化が見え始めます。
高齢猫に現れるサインをまとめてみました。
・寝てばかりいる
・白髪が見え始める
・関節炎のせいか足腰が弱った気がする
・(急に)痩せる、体重減少
・太る
・夜鳴きや大声で鳴く
・「怒りっぽい」や「甘える」など今までとは性格が変わる
・毛割れが発生するなど毛並みが悪くなる
「大声で鳴く」や「怒りっぽい」場合は、どこかに体の痛みがあり、痛みを飼い主にうったえている可能性があります。
「急に痩せる」場合は、病気のせいで食べても太れない状況になっている可能性も。
老化のせいにせず、異変を感じた場合は病院で相談をしましょう。
2.高齢猫がかかりやすい病気
猫も人間も高齢になると体調を崩しやすくなります。
猫が高齢期も健康的に過ごすため、かかりやすい病気について知っておきましょう。
かかりやすい病気を予防できるかどうかも、フード選びのポイントです。
2-1.慢性腎臓病
腎臓機能が低下していく病気
予防方法:腎臓に負担をかけないよう水をたくさん飲む工夫をするなど。
2-2.甲状腺機能亢進症
甲状腺の機能が活発化してしまう病気
予防方法:予防方法はないため定期的な血液検査をしましょう。
2-3.糖尿病
高血糖状態が続く事で臓器に障害が起こる病気
予防方法:肥満を防ぐ、炭水化物の多いフードは避けるなど。
2-4.悪性腫瘍
機能障害をもたらす腫瘍が増殖し続けて組織を破壊、他の組織へ転移する病気
予防方法:バランスのとれた食事、運動など。
2-5.便秘
十分量の便が出ない状況や快適に排出できていない症状
予防方法:ウエットフードに変える、食物繊維の入ったフードを選ぶなど
3.成猫との違いは?高齢猫用フードの選び方
成猫用フードとの一番の違いはカロリー量です。
高齢猫用フードはカロリー量が低めで、衰えてきた機能をサポートする成分が含まれています。
高齢期猫のフード選びで気をつけることは何でしょうか。
フードタイプ、種類や栄養素から考えてみましょう。
3-1.フードのタイプで選ぶ
フードのタイプは大きく分けて、2種類あります。
カリカリと言われるドライフードと、缶やパウチに入って販売されているウエットタイプです。
それぞれのフードの特徴について学んでいきましょう。
3-1-1.カリカリ(ドライフード)
【メリット】
・総合栄養食が多く、カリカリだけで1日に必要な栄養素が完結する
・ウエットに比べる1食分の価格が安価
・固いフードをかむ事で歯周病予防や口内炎防止の効果も
カリカリのメリットは、猫にとっても飼い主さんにとっても手軽に栄養摂取が完了する点です。
【デメリット】
・固いため歯が弱った高齢猫には、噛み切れず食べる事をやめ食欲減退につながる可能性がある
・水分が入っていないため水をあまり飲まない高齢猫には、水を飲んでもらう工夫が必要
カリカリを食べにくそうにしているのなら、ミキサーなどで1個の粒を小さくするのもおすすめ。
お湯や水にふやかして柔らかくしてもいいですね。
ウエットに比べてどうしても、水分量が減ってしまうので、水の温度や、ウォーターファウンテンを購入するなど、猫にとって一番飲みやすい方法を検討してみてください。
3-1-2.ウエットフード
【メリット】
・水分量が多い
・柔らかいため口の中にトラブルがあっても食べやすい
・味や形状などバラエティー豊かでフードを飽きさせない
食事と一緒に水分も取れるのが最大のメリットです。
ドライよりもウエットの方が好きな猫も多く、食いつきがいいため食欲がなくなる心配が減ります。
【デメリット】
・鮮度を保つため、添加物が含まれているものが多い
・柔らかいため、食べる事で口内環境によい影響を与える事はない
・ドライに比べると1食分の価格が高い
ウエットの一番の良さは猫の食欲を増進させる効果がある事です。
食欲がなくなりがちな高齢猫にとっては、食欲の維持が一番大切な事で、
毎日の食事にはドライフードをあげ、食欲や食べやすさなどの様子を見つつ、
時々、ウエットフードをあげるのがおすすめです。
3-2.フードの種類で選ぶ
主食としてフードをあげるなら、「総合栄養食」のフードを選びましょう。
ウエットフードは一見「総合栄養食」か「副食」か判断しにくいものが多く、
総合栄養食の記載があるのかどうか、目的に合わせえてしっかり確認しましょう。
3-2-1.総合栄養食
猫の主食にあたり、必要な栄養素をバランスよく配合し、健康維持のため毎日数回摂取します。
体重別に摂取量が異なり、フードによってあげる量も違うため、フードを変える際は必ず摂取量を確認しましょう。
3-2-2.間食
猫のおやつです。嗜好性が高く、総合栄養食をあげるよりも食いつきがよい事が多いです。
人間のおやつと同様に食べすぎは肥満につながります。
以下が猫が1日に必要な摂取カロリーの目安です。
・3kg(109~157kcal)
・4kg(132~190kcal)
・5kg(153~220kcal)
1日に必要な摂取カロリーの20%以内に収めましょう。
3-2-3.副食
総合栄養食の食いつきをよくするためにあげるフードです。
パッケージに「ふりかけ」のような記載や「総合栄養食と一緒に与えてください」などの記載があります。
ドライフードは高齢猫にとって口内トラブルがある時など食べにくい事もあり、ウエットタイプの副食をかける事で、改善される場合もあります。
食いつきはよくなりますが、あくまで副食は総合栄養食を食べやすくするもの。副食だけをあげるのはやめましょう。
3-2-4.栄養補助食
総合栄養食では補いきれない成分を補助する目的で摂取します。
「動物用サプリメント」や「動物用栄養補助食」などの記載があります。
関節痛や便秘など特定の症状で悩んでいる場合の、症状の緩和につながります。
3-3.フードの成分・栄養素で選ぶ
猫は肉食動物で、人間の5倍のタンパク質を必要とします。
その代わりに人間と比べて炭水化物はあまり必要ないと言われています。
フードの成分や栄養素を確認し、必要量が含まれているのか確認してあげるようにしましょう。
3-3-1.タンパク質
必要量:最低26%以上(推奨30%前後)
第一原料(原材料名で一番最初に記載のある原料)は、動物性タンパク質の肉か魚のものを選ぶのがおすすめ。
また、多すぎは腎臓に負担がかかるため、30%前後のものを選びましょう。
3-3-2.脂質
必要量:最低9%以上(推奨10~30%)
高齢猫は運動量が減るため脂質は抑えめにしましょう。
肥満傾向の高齢猫は、8~17%を推奨します。
3-3-3.食物繊維
必要量:5%以下
高齢猫は便秘がちになりやすいため、食物繊維の量にも注目しましょう。
肥満傾向の場合は15%程度が効果的と言われています。
3-3-4.リン
必要量:最低0.5%以上(推奨0.5~0.7%)
多すぎると高齢猫がなりやすい腎臓病になる可能性があるため、含有量が少なめのフードを選びましょう。
3-3-5.水分
体重別必要量:
・3kg(159.57ml)
・4kg(197.99ml)
・5kg(234.06ml)
食事でなるべく多く水分を取るなら、ウエットフードがおすすめ。
猫はもともとあまり水を飲まない動物のため、腎臓病予防のためにも水分を多く取るための工夫が必要です。
4.高齢猫用おすすめのフード選びのポイント!
・総合栄養食を選ぶ
・ドライフードを選ぶ
・高タンパク質(26~30%)を選ぶ
・食物繊維の量を配慮したものを選ぶ
・リン含有量を配慮したものを選ぶ
5. 高齢猫用おすすめのキャットフード3選
ドライフードで総合栄養食のものの中から、おすすめのフードを3つご紹介します。
比較的手に入りやすい商品を選びましたので、フード選びのポイントを見ながら、高齢猫のフード選びに是非参考にしてみて下さい。
1:ピュリナワン「健康マルチケア 腎臓/尿路・お腹・脳 11歳以上」
第一原料にキャットフードとして一番好ましい、動物性タンパク質の「チキン」を使用。
タンパク質が36%以上と豊富なのに、1kgのお値段が約758円と安価で毎日の食事の負担になりません。
他の成分についても、すべて基準値以上で、11歳からのエイジングケアに必要な栄養素も含んだ、高品質で低価格のキャットフードです。
第一原料 |
チキン |
タンパク質 |
○ (36.0%以上) |
脂質 |
○ (14.0%以上) |
食物繊維 |
○ (3.0%以下) |
リンの含有量 |
– |
値段/1kg |
約758円 |
2:ヒルズ サイエンス・ダイエット「シニア ライト 7歳以上 肥満傾向の高齢猫用 チキン」
第一原料に動物性タンパク質の「トリ肉(チキン、ターキー)」を使用。
タンパク質は豊富でも、脂質を最低限に抑え、肥満傾向の高齢猫にはピッタリのフードです。
また、「ヒルズ」は「満足いただけない場合の全額返金」を行っており、フードの好き嫌いのある猫ちゃんで、新しいフードを試すのが躊躇される場合でも、気軽に試せるのがよいです。
第一原料 |
トリ肉(チキン、ターキー) |
タンパク質 |
○ (33.8%) |
脂質 |
○ (9.3%) |
食物繊維 |
△ (8.2%) |
リンの含有量 |
○ (0.67%) |
値段/1kg |
約822円 |
3:ロイヤルカナンの「エイジング 12+」
第一原料は動物性タンパク質が好ましいため、「植物性分離タンパク」の点で少しマイナスですが、タンパク質の数値は基準以上を越えているため問題ないです。
食物繊維の量が、基準量より少し多めのため、お腹がゆるめの猫ちゃんが「エイジング 12+」に変える場合は、量など調整しながら様子をみつつあげましょう。
第一原料 |
植物性分離タンパク |
タンパク質 |
○ (28.0%以上) |
脂質 |
○ (17.0%以上) |
食物繊維 |
△ (10.9%) |
リンの含有量 |
○ (0.6%) |
値段/1kg |
1,745円 |
6.高齢猫の食事の悩みQ&A
Q:急にフードを食べなくなりました。
A:フードの見直しを検討してみてください。
まずは、原因の特定です。現在猫ちゃんは体調が悪そうではないですか。
ベッドの下に隠れていたり、じっと動かなかったりしていないでしょうか。
その場合は、体調不良でご飯が食べれない可能性がありますので、すぐにでも病院へ行きましょう。
普段と様子が変わらず、ご飯だけ食べない状況であれば、フード自体に原因があるのかもしれません。
現在のフードがカリカリならば、カリカリをお湯でふやかして柔らかくするか、パウチなどのウエットタイプをあげてみましょう。
柔らかくして食べるのであれば、食欲不振ではなくカリカリが食べにくかった可能性があります。
歯周病や口内炎で口内に痛みがあり食べられなかった可能性があるため、様子をみて病院へ行きましょう。
同じく普段と様子が変わらない場合で、単純にフードの味に飽きた可能性もあります。
機能面や成分などを確認しながら他のフードをあげてみるのもおすすめです。
Q:高齢期フードへの切り替え方法について教えて下さい。
A:現在食べているフードに、少しずつ新しいフード加える方法を試してください。
フードの切り替え方法については、高齢期フード用の方法があるわけではなく、他のフードへの切り替え方法と同じです。
現在のフードを減らし、減らした分を新しいフードに変える方法で、徐々に新しいフードを増やし、最後には新しいフードだけにする方法です。
好き嫌いのある猫ちゃんであれば、1粒ずつなど慎重に行って下さい。
1点だけ注意が、フードの種類によって栄養成分が異なり、1日にあげる量というのは変ってきます。
変更後のフードの1日摂取量を必ず確認し、切り替え後の食べ過ぎや食べなさすぎを防ぎましょう。
Q:お気に入りのフード以外食べないです。高齢期フードへの切り替えができないのですが。
A:現在のフードの量を見直し、サプリの利用を検討してください。
現在食べている成猫用のフードが、老猫になると体に害になるというわけではもちろんないです。
ただ、成猫の運動量で消費される事を仮定した栄養成分が含まれているため、
運動量の下がった高齢猫では過剰摂取となってしまい、太ってしまう可能性があります。
現在食べているフードに年齢別の摂取量などの記載がある場合は、その記載を必ず守って、
高齢猫用のフードに多く含まれている、便秘防止の食物繊維などはサプリメントで取るのもおすすめです。
ただ、サプリメントを取る場合は必ず獣医さんに相談を、自己判断はやめましょう。
7.フード以外でも愛猫の老化を遅らせるおすすめ習慣
7-1.ブラッシング
猫の換毛期と言われる、3月と11月頃は特に念入りに。
関節炎などで思うようにグルーミングが出来なくなった猫の衛生面が保たれ、猫のストレスが減ります。
毛並みもよくなり、見た目が若くなるのはもちろん、
毛球症の予防や、スキンシップは病気の早期発見にもつながります。
7-2.遊び
高齢期になっても猫は遊びが大好きです。
子猫の時のように、体を動かさなくても、視線を動かすだけでも十分です。
猫じゃらしなどのおもちゃに興味をしめさなくなった場合は、またたびなどの香りつきのものを選ぶなど、おもちゃの種類を工夫しましょう。
生活に適度な刺激を与える事で認知症予防にもつながります。
まとめ
猫に1日でも長く、健康的に生きてほしいのは飼い主さん全員の願いです。
その願いを叶えるため、飼い主にできる事は毎日の生活習慣を整える事と、異変があったら病院へ行く事です。
生活習慣の中でも大きなウエイトを占めるのが食生活。
食べる事は猫にとっても毎日の楽しみの一つです。
その楽しみを猫の様子を見ながら、より健康的でおいしいものをと一緒に考える事が、
高齢期の猫への飼い主から一番の愛情表現なのかもしれません。