ラブラドールレトリーバーは大型犬の一種で、日本はもちろん欧米など世界中で人気の高い犬種です。漁で得た獲物を回収する仕事を担っていたことから、筋肉質で力強い体格をしています。
散歩や運動を日常的に行っている場合はスリムな体型を維持できますが、運動不足や食べ過ぎが続くと肥満になりやすい犬種なのです。今回は、ラブラドールレトリーバーの適正体重や肥満にならないための体重管理方法をご紹介します。
ラブラドールレトリバーの体重と食事の量
ラブラドールレトリバーの体重
ラブラドールレトリバーの成犬の体重は、オスとメスでそれぞれ下記の値が目安です。
オス:29~36kg
メス:25~32kg
子犬の頃は体重の推移が著しく、下の表のように成長していきます。
オス | メス | |
月齢 | 体重(kg) | 体重(kg) |
1 | 4.2 | 3.3 |
2 | 9.0 | 7.5 |
3 | 14.2 | 12.1 |
4 | 19.0 | 16.4 |
5 | 22.9 | 20.0 |
6 | 26.1 | 22.7 |
7 | 28.4 | 24.7 |
8 | 30.1 | 26.1 |
9 | 31.5 | 27.1 |
10 | 32.7 | 27.9 |
11 | 33.7 | 28.6 |
12 | 34.5 | 29.1 |
ラブラドールレトリバーの食事
新生児期(生後3週間~30日)は離乳食を1日4回に分けて与えます。生後2ヶ月目から子犬用の普通食に切り替え、1日3~4回与えます。成犬用のフードは生後6ヶ月頃から始め、1日の回数は朝と夕の2回です。
子犬の頃は消化器官が未熟であるため、必ず子犬用のフードを与えましょう。ビーフジャーキーなど硬いおやつも、子犬の頃は控えるべきです。
一般的にペットショップやブリーダーから引き取るのは生後3ヶ月以降です。その時期に迎えたら離乳食ではなく子犬用のフードを与えますが、環境がガラリと変わるうえに食事の内容まで変わるとかなりのストレスになります。フードはなるべく引き取る前と同じものを与えるようにしましょう。
子犬用のフードから成犬用に切り替える時、またはフードのブランドを変える際には、突然切り替えるのではなく、今までのフードと新しいフードを混ぜて慣れさせましょう。そうすることで、消化不良による下痢や嘔吐を防ぐことができます。
餌に加えておやつを与えることもあるでしょう。おやつを与えすぎると、食事をとらなくなったり、体重が過度に増加することがあります。健康的な食生活を提供するためにも、おやつの与えすぎは禁物です。
ラブラドールレトリバーの肥満の基準
ラブラドールレトリバーと一言で言っても、種類や個体によって体格が微妙に違います。体格が違うと、もちろん体重も異なってくるのです。
一般的に体脂肪率が35%を超えると肥満と判断されます。しかし、家で体脂肪率を測ることは難しいでしょう。
では、飼っているラブラドールレトリバーが理想的な体重なのかどうかを見分けるには、どうすれば良いのでしょうか。
BCSで判断する方法
人間の肥満度を測る方法のひとつに、身長と体重で計算するBMIというものがあります。しかし、犬にはBMIといった肥満度を計測する数式はありません。
犬の肥満度を測る場合、BCS(Body Condition Score)と呼ばれる身体を見たり触ったりして肥満度を把握する方法を用います。
犬の身体を上と横の両方から見たり触ったりしてスコアを決めます。BCSのスコアには5段階あり、BCS3が痩せすぎでもなく太り過ぎでもない理想的な体型です。
日本で飼育されている犬の約3割が肥満であると言われています。一方でアメリカでは飼い犬の半数以上が肥満と言われているのです。日本もアメリカも、ペットに餌やおやつをあげすぎたり、十分な散歩や運動をさせていない傾向にあります。
BCSの表を参考に、飼っているラブラドールレトリバーの体格をこまめにチェックしてあげることで、痩せすぎや肥満を防ぎましょう。
ラブラドールレトリバーは太りやすい?
ラブラドールレトリバーは漁で活躍していた回収犬だったこともあり、活発に動くため肥満とはあまり縁がないようなイメージを持っている方もいるでしょう。
しかし、2016年にポーランドとイギリスで行われたそれぞれの調査によると、ラブラドールレトリバーは太りやすい遺伝子を持っている可能性が高いそうです。
イギリスの調査では、肥満体型のラブラドールレトリバー15頭と普通体型のラブラドールレトリバー18頭をグループ分けし遺伝子調査を行ったところ、肥満体型のグループには「POMC遺伝子」と呼ばれる遺伝子に変異が見られたのです。
310頭のラブラドールレトリバーを対象にした別の調査によると、遺伝子に変異があるうちの約25%に、食べ物に対する執着心が強い、食べ残しを漁るといった行動が見られたそうです。
ラブラドールレトリバーは太りやすい犬種と科学的に判明したことで、飼っているラブラドールの体重が過度に増加しないように、飼い主はより一層気をつけていきたいものです。
肥満が引き起こすラブラドールレトリバーの病気やケガ
ラブラドールレトリバーの体重が基準よりも増えて肥満になってしまうと、どのような病気やケガが考えられるのでしょうか。
股関節形成不全
股関節形成不全とは、股異形成とも呼ばれており、太ももの骨と骨盤を結ぶ股関節の形が変形する病気です。
股関節形成不全は大型犬に発症しやすい病気で、ラブラドールレトリバーも発症率が高いとされています。
股関節形成不全の7割は先天的に起こるとされていますが、ラブラドールレトリバーのように生後2ヶ月以降に体重が急激に増える犬は、股関節への負担が大きいことから股関節形成不全になりやすいのです。子犬の頃の体重増加でなくても、食べ過ぎや運動不足で肥満になった場合も注意が必要です。
股関節形成不全の症状
・腰を左右に揺らしながら歩く(モンローウォーク)
・スキップのようなしぐさ
・散歩や運動をしたがらない
・後ろ足を上手に曲げられない
下記の動画は股関節形成不全の疑いがあるラブラドールレトリバーが歩く様子を撮影したものです。
腰を左右に振って歩くしぐさは、股関節形成不全の症状でもっともよく見られます。股関節形成不全は生後6ヶ月頃から症状が現れるため、生後6ヶ月を過ぎて上記のような症状が見られたら、獣医に相談しましょう。
関節炎
犬も人間と同じように関節炎を起こすことがあります。関節炎も股関節形成不全と同様に、先天性のものと肥満など後天的な要因で起こるものがあるのです。
体重が増えすぎると、身体を支える足腰に負担がかかり、悪化すると歩くことすら困難になってしまいます。
後天的な関節炎の場合、肥満の他にも激しい運動や加齢などの原因があげられます。
椎間板ヘルニア
体重が過度に増加して、頭部や胴体を支える脊椎の椎間板に負担がかかりすぎると、椎間板が損傷する恐れがあるのです。
後ろ足を引きずったり、排泄時に後ろ足を曲げづらそうにしている場合、椎間板ヘルニアの疑いがあります。重症化すると、下半身不随になることもあるようです。
心臓病
体重が増えすぎると、心臓への負担が大きくなります。下記の症状がよく現れるようになったら、心臓病の疑いがあります。
・咳が出る
・散歩や運動をしたがらない
・失神する
心臓病もまた肥満だけでなく高齢により引き起こされることもあります。高齢になると他の要因で散歩や運動をしたがらない場合もあります。いずれにせよ、何かしらの病気が隠れている可能性があるため、獣医の診察を受けるようにしましょう。
失神は、心臓から送り出される血液が脳にうまく運ばれないことで起きます。失神してから数分で意識を取り戻しますが、失神は正常な状態ではないため、起こったらすぐに獣医のもとに連れていきましょう。
糖尿病
人間と同じように、犬も肥満になると糖尿病を患うことがあるのです。ラブラドールレトリバーは糖尿病にかかりやすい犬種のひとつで、オスよりもメスの方が糖尿病になりやすいとされています。
一度糖尿病にかかってしまうと、インスリンの投与や運動療法、食事の工夫など長期的な治療が必要になります。犬だけでなく飼い主の負担も大きくなることから、普段から糖尿病を発症しないように体重管理に気を配りましょう。
犬の避妊・去勢手術と肥満の関係
犬に避妊または去勢手術を受けさせた後に太りやすくなったという声をよく耳にしますが、なぜ避妊・去勢手術が肥満を招くのでしょうか。
エネルギーの消費量が少なくなる
避妊や去勢を行うと生殖能力が失われます。生殖行動ではエネルギーを費やすため、生殖行動がなくなるとその分消費エネルギー量が減少するのです。そのため、避妊・去勢手術の後に以前と同じ食生活を送っていると、太ると言われています。
食欲の増加
避妊や去勢をする前は、ホルモンの影響で食欲がある程度抑えられていますが、手術後はそのホルモンが減少し、性欲がなくなる代わりに食欲が増すのです。
運動意欲の減少
避妊や去勢を行うと、ホルモンの変化により運動意欲が低下することがあるようです。運動量が減ると、消費エネルギーが減少することで体重が増加しやすくなるのです。
避妊・去勢手術と肥満には直接的な関係はない?
一方で、避妊・去勢手術をしたからといって直接肥満につながるわけではないという専門家の意見もあります。
ラブラドールレトリバーについての書籍「The Complete Idiot’s Guide to Labrador Retrievers, 2nd Edition」では、避妊・去勢手術をしたから太るのではなく、手術後の食べ過ぎと運動不足が肥満を招くと述べられています。
また、プロのドッグトレーナーとしてナショナルジオグラフィックチャンネルの番組に出演しているシーザー・ミラン氏も、ほとんどの場合はエネルギーの高い食事を成犬になっても与え続けることが原因で太ると自身のブログで述べています。
ラブラドールレトリバーの肥満を防ぐ方法
ラブラドールレトリバーを肥満から守るために、飼い主はどのような点に気をつけるべきなのでしょうか。
餌やおやつを与えすぎない
ラブラドールレトリバーは食欲が旺盛な犬で、目の前に食べ物があると好きなだけ食べてしまう傾向にあります。食欲が旺盛なことは良いことだと与えすぎると肥満のリスクが高まるため、毎日決められた量を与えるようにしましょう。
おやつはなるべく低カロリーなものを選ぶことをおすすめします。ご褒美として与えることは問題ありませんが、量が多すぎると太るだけでなく偏食に陥いる場合もあるので注意が必要です。
適度な運動
ラブラドールレトリバーの場合、1日最低でも2回、60分程度の散歩や運動が必要です。運動量がこれよりも少ないと、エネルギーが十分に消費されずに脂肪が溜まってしまいます。
運動は肥満を防ぐだけでなく、ストレス発散や病気の予防にも繋がるため、健康的な生活を送るために、適度な運動を心がけましょう。
動物病院で定期的に健診を受ける
BCSを用いて飼い主自身でラブラドールレトリバーの体重管理を行うこともできますが、体格によって理想の体重は異なるため、獣医に定期的に見てもらうことをおすすめします。
獣医に診せることで、体重管理に関する適切なアドバイスももらえるでしょう。
ラブラドールレトリバーの体重管理に役立つグッズ
オリジン (Orijen)
市販のドッグフードと違うところは、グレインフリー(穀物不使用)であることです。穀物は犬にとって消化しにくい栄養素で、食べ過ぎると肥満や皮膚病などの原因になります。
オリジン (Orijen) は穀物を使用していないだけでなく、本来犬が食べるべき食事を再現し、動物性たんぱく質やビタミン・ミネラルが豊富に詰まっています。
スイカゾン(Suicazon) ペット用 早食い防止食器
肥満防止の目的で作られたペット用食器です。早食いはよく噛まないことで肥満になりやすいため、ゆっくり食べることが大切です。
ラブラドールレトリバーの中には、餌に執着するあまり早食いになる子がいます。早食い防止食器なら、一度に多くの量を食べることを防ぐため、自然と時間をかけて食事するようになるでしょう。
Greenies(グリニーズ) ウェイトマネジメント
参考URL:amazon
口臭や歯垢を予防しながら肥満対策にもなる犬用デンタルガムです。消化しやすい原料でかつ100%自然由来であるため、健康的なおやつになります。
もともと犬の口臭対策を目的として開発されましたが、肥満対策もばっちり取られているため、一石二鳥ではないでしょうか。
さいごに
以上、ラブラドールレトリバーの体重管理や肥満について解説しました。
ラブラドールレトリバーが肥満になると、最長で2年ほど寿命が縮まると言われています。それだけでなく、生活の質が低下する要因にもなるため、日頃から肥満にならないように体重管理には気をつけていきましょう。