ゴールデンレトリバー大型犬で体格がいい犬種です。がっしりとした骨格や筋肉で体重は30kg前後が一般的です。
しかし、食いしん坊であるゴールデンレトリバーは食べ過ぎる傾向にあり、体重が増えすぎると病気やケガをしやすくなり、寿命にも影響が出る可能性があります。飼い主はゴールデンレトリバーの体重管理を徹底し、肥満を予防する必要があるのです。
ゴールデンレトリバーの平均体重や肥満によって起こり得る病気・ケガ、肥満の予防方法などを解説していきます。
1.ゴールデンレトリバーの体重の推移
ゴールデンレトリバーの出生時の体重は300~500gです。その後オスとメスで体重に差が出てきて、成犬になるとオスは28~32.5kg、メスは24~28kgにまで成長します。
ゴールデンレトリバーの出生時から成犬までの体重推移は下記を参考にしてください。
メス | オス | |
出生時 | 300〜500g | |
生後1ヶ月 | 1.8kg | 2kg |
生後2ヶ月 | 6.5kg | 7kg |
生後3ヶ月 | 10kg | 11kg |
生後4ヶ月 | 13kg | 15kg |
生後5ヶ月 | 16kg | 18kg |
生後6ヶ月 | 18kg | 21kg |
生後7ヶ月 | 20kg | 23kg |
生後8ヶ月 | 22kg | 25kg |
生後9ヶ月 | 23kg | 26kg |
生後10ヶ月 | 23kg | 28kg |
生後11ヶ月 | 24kg | 29kg |
生後12ヶ月 | 25kg | 30kg |
成犬 | 24〜28kg | 28〜32.5kg |
上記はあくまで目安で、体格によってはこれを上回ることがあります。出生時に200g程度しかない子犬もいます。ゴールデンレトリバーを子犬の時期から飼う際は、上記の目安を参考にして体重管理を行いましょう。
2.ゴールデンレトリバーの食事
下記は、ゴールデンレトリバーの成長ステージごとの食事の目安です。
新生児期 (生後3週間~30日) |
幼年期 (生後30~90日) |
少年期 (生後90日~6ヶ月) |
|
餌の種類 | 離乳食 | 子犬用の普通食 | 子犬用の普通食 |
食事量/回 | 100~300g | 300~370g | 370~410g |
回数/日 | 4回(朝、昼、夕、夜) | 4回(朝、昼、夕、夜) | 3回(朝、昼、夕) |
青年期(生後6ヶ月~1年6ヶ月) | 成犬(生後1年6ヶ月~7年) | 老犬 (生後7年~) |
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餌の種類 | 成犬用 | 成犬用 | 老犬用 |
食事量/回 | 400~450g | 350~420g | 350~420g |
回数/日 | 2回(朝、夕) | 2回(朝、夕) | 2回(朝、夕) |
生まれたばかりの頃は人間と同じように母乳で育ちます。生後3週間頃から離乳食を開始し、生後1ヶ月ほどでドッグフードが食べられるようになりっます。離乳食はドライフードをお湯でふかして食べさせても大丈夫です。加える水分を徐々に減らしていき、生後3ヶ月頃にはドライフードをそのまま食べられるようにすることが理想的です。
子犬の頃はまだ消化器官が未熟であるため、成犬用のフードではなく必ず子犬用のフードを与えましょう。また、子犬の間はビーフジャーキーなど消化しにくいものは控えることが大切です。
一般的に子犬をペットショップやブリーダーから譲り受けるのは生後3ヶ月以降です。子犬にとっては、突然環境が変わってストレスを抱える時期です。そこで食事の内容もガラリと変わってしまうと、身体にも負担がかかります。食事はなるべく譲り受ける前と同じフードにすることをおすすめします。
子犬用のフードから成犬用のフードに切り替える際には、いきなり変えるのではなく、子犬用と成犬用を混ぜて与えて、少しずつ成犬用のフードに慣れさせていきます。
成犬になってからもフードの種類を変える場合は、同じように今までのフードを混ぜて新しいフードに慣れさせます。突然餌の内容が変わってしまうと、今まで摂ったことのない栄養素が身体に入ることで消化不良などを起こし、下痢や嘔吐の原因になってしまうからです。
普段の餌に加えて、おやつをあげることもあるでしょうが、与えすぎは禁物です。おやつの中にはカロリーが高いものがあり、あげすぎると肥満の原因になります。
ゴールデンレトリバーは食いしん坊なので、餌やおやつは与えられるだけ食べてしまいます。飼い主が体重管理をしながら、健康的な食生活を提供してあげましょう。
3.ゴールデンレトリバーの肥満の基準
ゴールデンレトリバーは体格によって理想の体重が異なります。では、ゴールデンレトリバーが理想の体重なのか肥満なのかを、どのように見分けることができるのでしょうか。
ゴールデンレトリバーの体型は、横から見た時と上から見た時で判別できます。
理想の体型
理想的な体型のゴールデンレトリバーは、横から見た際に下腹部がややへこんでいて、上から見るとくびれがはっきりしています。肋骨(ろっこつ)が見えなく、触ったときに感じられる程度です。
肥満体型
肥満体型のゴールデンレトリバーは、横から見るとお腹が垂れ下がっており、上から見た時にくびれがわからない状態です。また、頭を上げた時に首の部分に脂肪の段差ができることがあります。
BCSで判断する方法
人間の場合、身長と体重で肥満度を測るBMIという計算方法がありますが、犬にはそのようなものがありません。
しかし、犬や猫の身体を触ったり見たりして肥満の程度を確認するBCS(Body Condition Score)で、ある程度把握することができます。
参考URL:環境庁 「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
図のように、BCSには5段階あり、BCS3が理想的な体型です。飼っているゴールデンレトリバーの体重が適正かどうかを判断するために、適度にBCSを用いて体型チェックをしてみてはいかがでしょうか。
4.肥満が引き起こす病気やケガ
ゴールデンレトリバーが肥満になることで、どのような病気やケガが懸念されるのでしょうか。
股関節形成不全
太ももの骨と骨盤を結ぶ股関節が変形することで歩行に異常を出る病気を、股関節形成不全または股異形成(こいけいせい)と言います。
股関節形成不全はゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバー、ジャーマンシェパードといった大型犬に多発します。股関節形成不全の7割は先天的に発症し、残りの3割は肥満などの環境的な要因で起こります。
股関節形成不全の症状
・腰を左右に揺らしながら歩く(モンローウォーク)
・スキップのようなしぐさ
・散歩や運動をしたがらない
・後ろ足を上手に曲げられない
こちらの動画は、股関節形成不全になったゴールデンレトリバーが歩く様子をとらえたものです。歩きながら左右に腰を振っているのが伺えます。
ゴールデンレトリバーのように、股関節形成不全になりやすい犬種のみで交配すると、股関節形成不全になる確率は高まります。また、股関節形成不全になりやすい犬種の場合、上記の症状が現れなくても、股関節形成不全になっている可能性があります。
股関節形成不全の7割は遺伝的要因だとしても、リスクを最小限に抑えるためには、肥満を予防することが大切です。特に1歳になるまでに太ってしまうと、股関節に異常をきたすため、子犬の頃の体重管理には十分気をつけましょう。
前十字靭帯断裂
大腿骨と脛骨を結ぶ前十字靭帯が、何らかの圧力が加わることで切れてしまうことを前十字靭帯断裂といいます。前十字靭帯断裂もゴールデンレトリバーがかかりやすい病気の1つです。
多くの場合、交通事故など外的な圧力で前十字靭帯断裂になるのですが、肥満で常に股関節に圧力がかかっている場合でも、前十字靭帯断裂になることがあります。
前十字靭帯断裂の症状には、問題の足を上げたまま歩いたり、ひきずるなどの仕草があります。常に片足をあげたりひきずったりするようであれば、前十字靭帯断裂を疑ったほうが良いでしょう。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、頭部や胴体を支える脊椎の椎間板に負担がかかりすぎて損傷するという病気です。ゴールデンレトリバーは体格ががっしりしていますが、実は足腰が弱りやすい犬種なのです。そのため、骨に負担がかかりやすく、肥満になったり年を取ると椎間板ヘルニアになる可能性が高くなります。
椎間板ヘルニアになると足を引きずる行為が増え、排泄時に後ろ足を曲げるのが辛そうに見えます。重症化すると、自力で立ち上がれなくなったり、半身不随になってしまうのです。
ゴールデンレトリバーはもともと足腰に問題が生じやすい犬種であるため、肥満になると足腰に余計な負担がかかり、ヘルニアのような病気を引き起こしてしまいます。
熱中症
ゴールデンレトリバーに限らず、肥満気味の犬に起こりやすいのが熱中症です。皮下脂肪がつくことで、体内に熱がこもりやすくなります。さらに脂肪で気管が圧迫されて、呼吸が上手にできずに体温調節が困難に陥りやすくなるのです。
また、ゴールデンレトリバーは毛が長くダブルコートになっているため、暑さに強いとは言えません。
上記でご紹介した病気やケガ以外にも、ゴールデンレトリバーが肥満になると、高血圧や難産、糖尿病といった様々なリスクが生まれます。病気やケガを患ってしまうと、治療費がかかりますが、ゴールデンレトリバーのような大型犬は、小型犬に比べて費用が高くなりがちです。
ゴールデンレトリバーの健康と飼い主のお財布のためにも、日頃から肥満を予防することが大切です。
5.犬の避妊・去勢手術と肥満の関係
犬が避妊や去勢手術をしたら太りやすくなったという声をよく聞きますが、なぜ太りやすくなるのでしょうか。
消費エネルギーの減少
避妊や去勢の手術をすると、生殖能力が失われます。それまでは生殖行動にもエネルギーが使われますが、手術後は生殖行動がなくなるために、消費エネルギーが減ってしまいます。その状態で手術前と同じ食生活を送っていると、太りやすくなるのです。
食欲が増す
犬はもともと男性ホルモンや女性ホルモンの影響で、ある程度食欲が抑えられています。しかし、避妊・去勢をすることでホルモンが減少し、性欲がなくなる代わりに食欲が増すのです。
運動意欲が落ちる
避妊や去勢をすると、おとなしくなる犬がいますが、これはホルモンの変化で運動意欲が落ちていることが考えられます。運動をしなくなると、人間と同様太りやすくなります。
避妊・去勢をすると肥満のリスクが2倍に
約3,000頭のゴールデンレトリバーを対象にしたアメリカの調査によると、避妊・去勢をしていない犬としている犬とで、肥満の割合は下記のようになっています。
避妊・去勢していない | 避妊・去勢をしている | |
肥満のゴールデンレトリバーの割合(オス) | 22% | 44% |
肥満のゴールデンレトリバーの割合(メス) | 21% | 37% |
この調査結果から、避妊や去勢をすると肥満のリスクがおよそ2倍になることが伺えます。
一方で、避妊や去勢は肥満との直接的な関係はないという専門家の意見もあります。ナショナルジオグラフィックの「ザ・カリスマ ドッグトレーナー ~犬の気持ち、わかります~ 原題:Dog Whisperer」に出演するドッグトレーナー、シーザー・ミラン氏は、自身の運営するサイトのブログで、避妊や去勢をするから太るのではなく、ほとんどの場合、エネルギーの高い食事を成犬になっても与え続けることが原因で太ると述べています。
出典:https://www.cesarsway.com/dog-care/spay-and-neuter/spay-and-neuter-myths
6.ゴールデンレトリバーの肥満の予防方法
ゴールデンレトリバーを肥満から守るためには、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。
フードの量に気をつける
ゴールデンレトリバーは餌やおやつが目の前にあると、好きなだけ食べる傾向にあります。先ほどご紹介した食事の量を大幅に超えないようにしましょう。
すでに肥満気味のゴールデンレトリバーには、その量を少し減らすことをおすすめします。突然餌の量を半分にしたりすると、ストレスになるかもしれません。犬が気づかない程度に、徐々に減らしていきましょう。
おやつは最小限に抑える
犬の飼い主の中には、理由もなく犬におやつをあげる人がいますが、これは犬を太らせるだけでなく、しつけの観点からも良いとは言えません。
おやつは、飼い主のコマンド通りに動いた時などに限定しましょう。また、おやつに記載されている1日あたりの目安量を超えないように気をつけることが大切です。
適度な運動を心がける
食事の量に気をつけていても、運動をまったくしない状態であれば肥満を招きます。ゴールデンレトリバーの場合、最低でも1日2回の散歩、1回あたり30分以上を心がけましょう。
たまには散歩だけでなく、ドッグランなど自由に運動できる場所を提供してあげることも必要です。フリスビーなど飼い主と参加できる遊びを取り入れると、より良い運動になります。
定期的に獣医の診察を受ける
BCSなどで飼い主が体重管理をすることが大切ですが、専門家に診せることでより正確な体重管理ができ、アドバイスをもらうことができます。
ゴールデンレトリバーの一般的な理想体重は先に述べましたが、体格次第では理想体重がそれを下回ることがあります。定期的に獣医に連れていき、今の体重が適正かどうかを判断してもらいましょう。
7.肥満予防のおすすめフード・グッズ
ゴールデンレトリバーの肥満予防に最適なフードやグッズをご紹介します。
ネルソンズドッグフード
参考URL:ネルソンズドッグフード
イギリスのトップブリーダーが開発したネルソンズドッグフードは、犬の身体が消化しづらい穀物を一切使用していないグレインフリーのドッグフードです。
市販で購入できるドッグフードの多くは、かさ増しのために穀物が含まれています。犬が穀物を継続的に摂取すると、消化不良が続いて肥満になるだけでなく、下痢や皮膚病などの健康不良を招きます。特にゴールデンレトリバーは皮膚病になりやすい犬種であるため、グレインフリーのドッグフードがおすすめです。
ネルソンズドッグフードは穀物不使用だけでなく、骨格と毛並みを考慮した高タンパク質と炭水化物、サーモンオイルが使用されています。ゴールデンレトリバーは関節に支障をきたすことが多くありますが、ネルソンズドッグフードに含まれているグルコサミン・コンドロイチンが関節を丈夫に保ってくれるでしょう。
スイカゾン(Suicazon) ペット用 早食い防止食器
参考URL:amazon
犬の早食いは人間と同様、肥満の原因になります。ゆっくり食べさせることで、満腹感を得られやすくなります。
こちらの早食い防止食器は、迷路のような突起が付いており、一度に多くの量を食べてしまうことを防ぎます。直径が18.5mmで、大型犬にも適したサイズです。
Greenies(グリニーズ) ウェイトマネジメント
参考URL:amazon
肥満予防をしながら口臭・歯垢予防にもなる犬用デンタルガムです。消化吸収に優れており、噛み応えがあるので噛む習慣を身に付けさせることができます。
犬の大きさに合わせてサイズが選べます。主原料は100%自然由来なので、健康的なおやつとして活躍するでしょう。
アメリカの農学博士が飼い犬の口臭を心配して開発したというGreeniesは、世界55ヶ国で歯磨き専用ガムとして人気があります。肥満予防をしながら歯のケアもできるとなると、飼い主としては嬉しいのではないでしょうか。
ゴールデンレトリバーを肥満から守ろう
ゴールデンレトリバーが肥満になると、様々な病気やケガを引き起こすだけでなく、寿命が最長で2年縮まるという調査結果があります。肥満はゴールデンレトリバーの生活の質を下げる要因になってしまうため、飼い主は日々体重管理をすることが大切です。
ゴールデンレトリバーと長い年月を健康的に暮らすために、今回ご紹介した点を、ぜひ犬との生活に役立ててください。