子犬のしつけ:家に迎えた日から始める6つのしつけポイント

子犬を飼い始めた時、里親として犬を引き取り飼い始める時、「いつからしつけを始めたらいいの?」「本の通りに教えても、なかなか覚えてくれない」「なんども同じ失敗を繰り返す」と多くの飼い主が悩むのではないでしょうか?

これらはみんな同じで誰もが一度は同じことを悩みます。

様々な犬種があって同じ犬種でも性格が異なります。でも、犬のしつけには犬種、年齢、生活環境に関わらず共通する「基本」のルールがあります。基本のルールを覚えておくと、犬のしつけは驚くほどにスムーズにはかどりますよ!

今日は子犬のしつけについて抑えておくべきポイント6つをご紹介しますので参考にしてみてくださいね。

1.犬のしつけは「家に迎えたその日」から

一番多く寄せられる質問に「いつから」しつけを始めたらいいか?というものがあります。その答えは「犬種、年齢、飼い主の飼育経験、犬の生活環境に関わらず、家に迎え入れたその日」から始めます。

その理由は、「犬を混乱させないため」です。ありがちな失敗は、「子犬だから」「まだ新しい家に慣れていないから」と、迎え入れて数日~数週間は多少のいたずらや失敗を叱らずに、見逃し生活させる事です。

この方法は、子犬に余計なストレスを与えない、恐怖心を与えないとして推奨された手法でもありますが、この方法がかえって子犬を混乱させ、ストレスを与え、しつけの失敗を招くのです。例えば、、、

・トイレを好きな場所でいつでも済ませる
・家具や飼い主の手を甘噛みする
・吠える
・食べ物を独り占めする

などのいたずらの全てを飼い主が見逃しておくとします。子犬は、この「家」ではこれらの行動が許されると理解し、問題行動は好奇心も合間ってますますエスカレートしてゆくでしょう。しかし、子犬が新しい生活に慣れた頃、急に飼い主の態度が変わります。

・トイレは決められた場所だけで済ませるように指示を出す。失敗をすれば叱られる
・甘噛みをすれば無視をされたり、叱られる
・吠えると「うるさい」と起こられ、ハウスに閉じ込められる

子犬は「なぜ」飼い主の態度が変わったのか、この先どうなるのかを理解出来ず、混乱状態になってしまいます。飼い主が判断した「しつけのはじめ時」が子犬には理解できないからです。子犬はそれまでの自由な生活としつけとしての生活の2つを使い分けなければなりません。このような混乱を招かない為にしつけは、、、

・家に迎え入れたその日から始める
・途中でルール変更をしない
・家族全員で共通のルールを決める
・恐怖や体罰で覚えさせずに、「頭」で理解させる事が基本のルールです。

2.最初に教える事は「おいで」

子犬にまず、最初に教える事は「おいで」です。つまり飼い主の指示に従って、決められた場所まで戻る事、駆け寄る事です。実は、この「おいで」が遊びたい盛りの子犬にとって、一番難しいしつけです。しかし、この「おいで」をマスターさせる事で、その先のしつけがとてもスムーズに進みます。

「おいで」の教え方

①子犬にリードをつけます。(市販のリードは1.2mですが、自宅にある紐を代用し、2~3mあってもよいでしょう)
②リードを付けた状態で子犬を自由に行動させます。
③飼い主が子犬から見える様に「おやつ」や「フード」を指でつまみ、子犬に「おいで」と声を掛けます。(子犬の注意を引くために、音のなるおもちゃを活用し、音を鳴らしてからフードを見せてもよいでしょう)
④子犬が「おやつ」に向かって駆け寄ってきたら、子犬が飼い主の足に触れる距離まで近づいたタイミングで「ヨシ」と声をかけ、「ご褒美」を与えます。

この時のポイントは、、、

①「おいで」の合図を無視させてはいけません。
子犬は「おいで」の合図に反応し、行動しない時は、すぐにリードを手繰り寄せ、飼い主の足元まで引き寄せます。その上で、「ご褒美」を与え、再度自由行動をさせます。
②子犬が飼い主の手の届く距離まで戻るまで、「ご褒美」を与えてはいけません
飼い主の方から近寄る、ご褒美を投げ与える、飼い主から手の届かない距離で立ち止まるなどの行動は、正しく「おいで」が出来ているとはいえません。
③「おいで」は子犬が遊びに夢中になっている時、ソファーでくつろいでいる時など、ランダムなタイミングで繰り返し教え、いかなる状況でも飼い主の合図に反応出来る様に練習を重ねましょう。

実は、「おいで」を条件反射的に行動出来るようにしっかりと身に着けさせておくと、将来、ドッグランでの呼び戻しが出来、事故やトラブル、喧嘩を回避出来るようになります。

散歩の途中に不意に犬が逃げてしまった時にも、「おいで」の合図で呼び戻す事も出来ます。つまり、単なる「服従」訓練ではなく、愛犬の危険回避の為に大変有効なしつけになるのです。

3.食事は「オスワリ」「マテ」だけでなく「共有」を

食事を与えるタイミングは、子犬の集中力が高まっていて、スムーズに合図に従います。その為、「オスワリ」や「マテ」を教えるとすぐに憶え、次からは飼い主が合図を出さずとも、子犬が先に「オスワリ」をするようになるでしょう。しかし、食事のしつけは、「オスワリ」や「マテ」だけではありません。

子犬に教えるべき食事のルールには「共有」も大切です。「共有」の教え方は、、、

・ドッグフードを飼い主の掌に乗せ、食べさせる
・子犬が食事をしている最中に、体に触れる
・子犬が食事をしている最中に「器」に飼い主が手を入れ、ドッグフードに触れる

などの方法で教えます。このしつけは、子犬が生後一歳を過ぎ、大人になってからも、日常的に続けてゆきましょう。なぜ「共有」を教える必要があるのでしょうか?

それは食欲旺盛な子犬にとって食事は出来る限り独占したいものです。もちろん、食事中に誰かに邪魔をされたり、食べ物を取られそうになれば不快感を憶えるのも当然です。

実は犬の祖先であるオオカミは、捕まえた獲物を群れの中で力の強い者から順に食べ進めます。力の弱い者は最後に残った骨や肉のかけらにしかありつけません。

この習性が犬にも残っているため、出された食事を自分一人で独占する、家族にも分け与えないという事は、群れの中でのボス意識が強まってしまうのです。その結果、家族に対して強気な態度を表し唸る、噛みつくなどの問題行動が起こります。

子犬が食事をしている最中に家族が器に触れる、食事を触るという行動はつまり、家族と子犬との力関係が対等だと教える意味があります。対等な相手には、たとえこの先爪切りやブラッシングなど子犬にとって不快な事をされても、過剰に暴れたり、唸ったり、噛みついたりという問題行動は起こりません。

4.問題行動の解消は子犬にわかる「言葉」で伝える

子犬の問題行動には、、、

・甘噛みをする
・玄関チャイムに吠える
・飛びつく
・散歩中にリードを強く引っ張る

などがあります。これらの問題行動に飼い主はつい「ダメ」「イケナイ」と叱りがちです。なかなか問題行動が改善されないと、益々叱り方が強くなり終いには「叩く」などの手段を取る事もあります。散歩の引っ張り癖の解消に「チョークリード」と呼ばれる、首が締まるタイプのリードを活用する飼い主も多く見られます。

しかし、このような対応では、どんなに強く叱っても、犬は一瞬怯えたような表情は見せるものの、なかなか問題行動は解消されないでしょう。

では、なぜ解消されないのでしょうか?それは、愛犬の知能が低いからでは決してありません。子犬は、飼い主の指示を必ず聞いています。しかしどのような行動を取ればいいかわからないだけなのです。

具体的には、、、

・オスワリと言われたら、「座る」
・オイデと言われたら、飼い主の傍に駆け寄る
・ハウスと言われたら、ハウスに入り静かに過ごす

と子犬は理解し、行動出来ています。しかし、、、

・ダメと言われた時
・ウルサイと言われた時

子犬は、どのような行動を取ればいいか、きっと教えられていないでしょう。同様に、チョークリードを使い、引っ張ると瞬時に首が締まる事は理解出来ても、ではどの位のスピードで歩けばいいのか、飼い主との距離感はどうすればいいのかを教えられていない事もあります。

つまり、子犬のどのような行動を取るべきかさえ、明確に教えておけば問題行動はすぐに解消出来るのです。

例えば、、、

玄関チャイムに反応し、吠える時は、「オイデ」と指示を出しましょう。

子犬は、吠えるのを止めて、飼い主の傍へ駆け寄ってきます。飼い主が玄関から離れた場所に居て、子犬を呼び戻せばいいのです。犬は吠える時に対象物の近くへ行くものです。つまり、玄関で吠えている犬を極力短時間で黙らせるには、玄関から遠ざけ、オスワリをさせ興奮を鎮めればいいのです。

同様に、、、

甘噛みをする時は、オスワリをさせましょう

歯の生え変わりのむずがゆさ、遊びの延長で子犬は甘噛みをするものです。しかし、子犬の尖った歯で力加減する事無く噛みつかれると、飼い主にとって相当な痛みがあるものです。

子犬の甘噛みに「ダメ」と叱ったり、無視をしても一向に効果は無く、性格によってはエスカレートするでしょう。子犬が甘噛みをした時は、「オスワリ」をさせましょう。オスワリをすると自然と飼い主から距離が出来、甘噛みが出来なくなります。子犬の興奮が治まるまで、「オスワリ」の体勢を維持させます。

こうする事で、子犬は「甘噛み」をしてもいい場所、そうでない場所を覚えます。飼い主が歩き回る時に足やスリッパに噛みつく、じゃれる時も同様です。単に叱るのではなく「オスワリ」「フセ」と指示を出し、子犬の行動を制限します。

このしつけを繰り返すうちに次第に子犬は、おもちゃやガムなら満足が行くまで噛み続けてもいい事、飼い主の手や足を噛むと面倒な行動制限がかかる事を頭で理解出来るのです。

5.社交的な性格は、訓練で身につきます

犬を連れて外出をしたい、ドッグランに連れて行ってあげたい、一緒に旅行がしたいと考えていても愛犬の無駄吠え、人見知りが酷く諦めてしまったという飼い主の声が多くあります。飼い主以外の人間や他の犬、自動車やバイク、小さな子供に過剰に反応し、吠えてしまう性格の犬が今非常に増えています。

この様な性格は、ある程度生まれつきの性分ではありますが、基本的には幼少期のしつけで未然に防ぐ事が出来るものです。

将来、社交的で、明るく、人懐こく、どこでもいつでも一緒に出掛ける事が出来るように育てるには、生後一年までの間に十分な「社会経験」を積ませる事が必要です。

子犬に「社会経験」を積ませるためには、、、

家族以外の人間と積極的に触れ合いを持ちましょう

散歩中に顔を合わせる人はもちろん獣医師やトリマー、訓練士などとも積極的に交流の場を持ちましょう。すれ違うだけでなく、子犬の体に触れてもらい、抱き上げたり、オヤツを与えてもらうとより効果的で、人見知りの予防、解消につながります。

犬種、年齢関係なく、様々な犬と触れ合い、交流を持たせましょう

子犬のうちは警戒心が無く、他の犬とも積極的に遊べます。時には大人の犬に向かってしつこく接してしまったり、甘噛みをして叱られる事もあるでしょう。子犬同士であれば、お互いに疲れ果てるまで遊び周る事もあります。

このような他の犬との交流を通じて、犬同士の挨拶の仕方、相手の気持ちの読み取り方、お互いの縄張りについて学びます。

大抵の場合、犬の散歩は毎日同じ時間、同じルートになりがちです。毎回顔を合わせる人も犬も決まってしまうでしょう。しかしそれでは、十分な社会経験を積めているとはいえません。一頭でも多くの犬と会い、社会経験を積むためには、、、

①散歩の時間を10分、1時間と前後させあえて顔ぶれを変えてみましょう
②散歩のルートはランダムに変更し、人、犬、交通音などのバリエーションを増やしましょう
③子犬が立ち止まり、臭いを嗅ぐ時は、出来る限り中断させずに、気の済むまで情報収集をさせてあげましょう
④ドッグランやパピーパーティなど初対面の相手と出会える場所へ積極的に連れ出しましょう

このように、生後一年未満の時期は、日々受ける全ての刺激が訓練になるのです。休日や天気のいい日には、いつもと違う場所、行ったことの無い場所へ積極的に連れ出してあげましょう。

6.咥えた物は自分の物。無理強いではなく、交換で解決します

好奇心が旺盛な子犬は、飼い主がちょっと目を離した隙に、噛んではいけない物を齧る、小さな物を咥えてしまう事も度々あるものです。中には、危険な物もあり、飼い主としてはつい焦って取り上げようとすることでしょう。しかし、この行動は子犬の命を危険にさらす可能性もある大変危険な行動です。

子犬が咥えている物を取り上げたい時は、、、

①無理に口を開けさせる
②口の中に指を入れ、取りだそうとする
③抱き上げ、目を見て叱る

という行動は決してしてはいけません。子犬はパニック状態になり、急いで口の中にある物を飲み込もうとします。子犬の口を自ら開けさせ、安全に回収する為には、、、

①オヤツやフードなど食べ物を用意する
②子犬が「物」を咥えたままの状態で、オスワリ、フセなど日ごろ食べ物を与える時にさせる指示を出す
③食べ物を子犬から数十cm離れた場所に転がし、食べさせる。もしくは、飼い主の掌に食べ物を置き、食べさせる

この手順で進めると、食欲旺盛な子犬は条件反射的に食べ物を食べます。その時、自然と口に咥えた「物」を自ら離します。子犬が食べ物を食べようとした瞬間に「物」を回収します。

今後は、再度のいたずらを予防する為に、子犬の背の届く場所には「物」を置かないよう徹底しましょう。子犬は一度興味関心を持った物は、飽きるまで、壊れるまで繰り返し遊びたがる物です。

常に飼い主が目を配り、食べ物と物々交換が出来るわけではありません。何度か繰り返すうちに、飼い主の目の届かない場所でいたずらをするようにもなります。その為、子犬の「視界に入らない」「背の届かない」場所をしっかりと確認し、置き場所を変えておきましょう。

まとめ

子犬や成犬の「しつけ」に関しては多くの飼い主さんがお悩みを抱えているものです。中でも多いのは「無駄吠え」「噛みつき」などの特定の状況で起こる「条件反射的に起こる行動」です。

これらの問題行動は、突発的に起こり、犬が興奮状態にある事から、つい「性格だから」「仕方ないから」としつけによる改善を諦めがちです。
しかし、犬の問題行動はたとえ何歳になっていても必ず改善する事が出来ます。

犬は常に人間の行動、表情、言葉に意識を傾けています。そしてその感情を理解し、共感し、より良い関係を築こうと考える動物です。その為、たとえ何歳になっていても、しつけ直しが出来るのです。里親として引き取った犬が新しい生活環境で問題行動が改善され、家族として素晴らしい関係を築けるのはその為です。

問題行動を諦め、共に生活をするのは飼い主にとっても相当なストレスがあるものです。しつけの基本を理解し、今期強く改善を続ける事できっと今よりも行動範囲が広がり、犬を通じた新たな友人関係も築けるように成る事でしょう。

今日ご紹介したしつけ方法、是非参考にしてみてくださいね!