犬も人間と同じように、食べ過ぎや運動不足から肥満になることがあります。犬が肥満になってしまうと、さまざまな病気のリスクを背負い、寿命を縮めることになるのです。
肥満は犬自身が辛い思いをするだけでなく、飼い主とのかけがえのない時間の質が低下し、その時間の長さも短くなってしまいます。
日本に住む飼い犬の4割が肥満という現状をご存知でしょうか。運動不足や餌・おやつのあげすぎで多くの飼い犬が太っているのです。
愛犬と長い年月を幸せに過ごすために、肥満にならないように気をつけることが大切です。今回は、犬が肥満にならないためのダイエット方法やお役立ちグッズなどをご紹介します。
犬の肥満はどうして起こる?
犬の肥満は摂取カロリーが消費カロリーを上回ることで引き起こされます。子犬の頃は育ちざかりで食事の回数も多いのですが、成犬になると普通は餌の量は以前よりも減らします。しかし、成犬になってもそれまで通りの量を与えるとカロリーが十分に消費されずに脂肪に変わってしまうのです。
また、散歩や運動の量が極端に少ないことも肥満の要因です。散歩や運動の時間は犬の大きさや犬種によって異なります。大型犬は比較的多くの運動量を必要としますが、それを満たしていないと肥満になりやすいでしょう。
避妊や去勢の手術を受けると、生殖行動が抑えられる分、消費カロリーは減ります。手術の後も以前と同じような食生活をしていると、肥満になるといわれているのです。
他にも、遺伝的な要因で肥満になりやすかったり、病気やケガなどをきっかけに動くことが少なくなると肥満につながります。
犬の病気の中にはインスリノーマと呼ばれる膵臓の病気が存在し、症状として食欲がかなり旺盛になります。
また、甲状腺機能低下では、身体が衰弱しても食欲は低下しないため、摂取カロリーが消費カロリーを上回り太ってしまうことが多いようです。
犬が肥満になるとどんなリスクがあるの?
犬が肥満になると、身体のさまざまな部分に負担がかかり、ケガや病気の原因になります。
関節炎
体重が増えると足腰に負担がかかり、関節が傷みやすくなります。関節炎は骨と骨の間の軟骨がすり減ることで起きますが、高齢や肥満の犬に発生しやすいのです。
他にも、運動不足や外傷によって引き起こされることもあります。関節の炎症を放置しておくと、慢性的な痛みにつながります。
関節炎になりやすい犬種
・ラブラドールレトリバー
・ゴールデンレトリバー
・シェットランド・シープドッグ
・ポメラニアン など
下記のような症状が出たら、関節炎を疑ったほうが良いでしょう。
・足を引きずる
・階段を上りたがらない
・起き上がりにくそうにしている
・散歩に行きたがらない
飼い犬の5頭に1頭は関節炎を患っているというデータがあります。うちの犬は健康だから大丈夫だと考えずに、少しでも上記の症状が出たら念のため獣医に診てもらうことをおすすめします。
心臓病
犬の心臓病は肥満や気温の差が主に起因するといわれています。心臓病の中でも最も多いのが、「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」と呼ばれるもので、心臓の弁が変形して血液が逆流し心臓に負担がかかるといったものです。発症したばかりの頃は症状が現れにくいため、注意が必要です。
心臓は全身に血液を送り、酸素や必要な栄養を運ぶ役割を果たしているのですが、肥満の場合、心臓が余計に働かないといけない状況に陥るため、負担がかかってしまうのです。
心臓病は発症当初は症状が現れにくく、進行すると下記のような症状が出ます。
・咳が出る
・散歩や運動をしたがらない
・失神する
心臓病にかかりやすい犬種
・ポメラニアン
・マルチーズ
・キャバリア
小型犬が心臓病にかかりやすいとされていますが、肥満であれば大型犬でも発症する確率は十分に高いでしょう。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が飛び出し、脊椎神経を圧迫することで起こる病気です。
椎間板ヘルニアにかかりやすい犬種
・ダックスフンド
・ウェルシュコーギー
・フレンチブルドッグ
・チワワ など
中でも胴体が長い犬種が椎間板ヘルニアにかかりやすいといわれています。身体の作りからもともと椎間板ヘルニアにかかりやすい犬もいますが、肥満などの環境的な要因で発症することもあるのです。
また、階段の上り下りは背骨に負担がかかるため、階段を使う機会が多い場合は注意が必要です。
糖尿病
糖を吸収するにはインスリンというホルモンが必要になります。食べ過ぎによって血液中の糖分が多くなると、より多くのインスリンが必要なのですが、何らかの原因でインスリンが不足すると糖が尿に出てしまいます。
それが糖尿病なのですが、人間と同じように犬も肥満になることで糖尿病を発症するリスクが高まってしまうのです。肥満の他にも、加齢や先天的に膵臓の機能不全を患っているなどの要因もあります。
糖尿病は一度発症すると治りにくく、食事療法やインスリン投与など長期的な治療が求められます。糖尿病は白内障や神経障害などの合併症を引き起こすこともある恐ろしい病気です。
糖尿病にかかりやすい犬種
・ビーグル
・プードル
・ミニチュアシュナイザー
・ダックスフンド など
なお、性別によっても糖尿病になる確率が異なり、メスが発症する確率はオスの4倍程度といわれています。
糖尿病の症状としては、水を大量に飲んだり食べているのに体重が落ちる、おしっこの回数が増えるなどが挙げられます。
ダイエットすべき?太っているかどうかをチェック
犬種によっては、ずんぐりしているのが普通だったりもともとやせ細ったような体型の犬がいます。なかなか見た目では太っているか判断しにくいのですが、BCS(Body Condition Score)と呼ばれる判定方法で、太っているかどうかを判断することができます。
参考URL:環境庁 「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
BCSでは犬の身体を上と横から観たり触ったりしながら5段階で体型を評価します。
理想的な体型(BCS3)は上から観た時にくびれが見られ、助骨は目立たないが触った時に感じる程度です。
BCSを参考に、飼い主自身で定期的に飼い犬の体型チェックをすることをおすすめします。もし判断しにくい場合は、獣医の診察を受けて体型チェックをしてもらうのも良いでしょう。
ダイエットのためのご飯の与え方
犬を肥満にさせないようにするには、どのようにご飯をあげれば良いのでしょうか。
フードの量に気をつける
ドッグフードの裏面に記載されている目安量を参考にしながら餌を与えている飼い主さんは多いのではないでしょうか。
犬種や成長ステージによって食べる量は異なりますし、散歩や運動の時間などのライフスタイルによっても必要な摂取カロリーは違ってくるでしょう。
フードに記載されている量はあくまで目安として捉え、多すぎると思ったらその都度減らすことをおすすめします。
飼い主さん自身で適切な量を決められないのであれば、一度獣医に相談するとどのくらいの量を与えれば良いのか教えてくれるでしょう。
市販のドッグフードでは太りやすい
市販のドッグフードの多くは、かさ増しのために穀物を多く含んでいることをご存知でしょうか。
穀物は犬にとって消化しにくい栄養素で、摂りすぎると消化されずに脂肪に変わってしまいます。
ドッグフードを購入する際には、なるべく穀物が少ないまたは穀物不使用(グレインフリー)のフードを選ぶようにしましょう。成分中にささみなどの低カロリーな原料が多く含まれていると理想的です。
おやつの与え方
フードの量を減らしても、おやつを与えすぎると肥満を防ぐことはできません。おやつの中には高カロリーなものもあるため、量や回数には気をつけましょう。
おやつをたくさん与えている場合は、急に減らすと犬がストレスを感じてしまうため、少しずつ減らしていくと良いでしょう。犬は1度でもらうおやつの量よりも、回数で喜びを感じる傾向にあります。量を減らしながら複数回に分けておやつを与えると、ストレスを感じずに済みます。
おやつは、できれば消化しやすくカロリーも低いものを選ぶようにしましょう。
人間の食べ物は与えない
自分が食べているご飯やおやつ、一口くらいなら大丈夫!と思ってついつい与えてしまっていませんか?犬が太る原因のひとつに人間用の食べ物があります。
人間用の食べ物はドッグフードや犬用おやつと比べて塩分や脂質など栄養価が高いものばかりです。味付けも濃いため人間の食べ物に慣れてしまうとドッグフードなど犬用の食事を食べなくなってしまう可能性もあるので注意が必要です。
普段、自分が食べているものを与える習慣がある方は心を鬼にして決して与えないようにしましょう。
ダイエットのための散歩・運動方法
散歩や運動の時間が短いと、カロリーが消費されずに脂肪に変わってしまいます。散歩や運動の時間が十分だと、体重増加を防ぐだけでなく、ストレス発散にもなります。
散歩時間は、小型犬で20~30分を1日2回、大型犬で30~60分を1日2回が目安です。日々の散歩時間が足りない場合は、今までよりも時間を伸ばしましょう。また、ドッグランなど思い切り運動できる機会も提供してあげると理想的です。
ただし、過度な運動は逆に負担になり、ケガの原因にもなるため注意が必要です。すでに太り気味の犬が突然ランニングや障害物競争などの激しい運動を始めると、足腰を痛めたり骨折したりする危険性があるのです。軽い運動からはじめ、体重がある程度落ちるのを待ちましょう。
室内でも出来るダイエット
散歩に行きたくても、雨などで行けないことがあります。散歩にいけないからとただ室内にいても運動不足になりますし、精神面でも良くありません。
外に出られない時は、室内でできる遊びを通して運動させることをおすすめします。室内での遊びとしては、下記のようなものがあります。
・ボールを投げて飼い主の元に持ってこさせる
・ボールなどを頭上に投げてキャッチさせる
・室内におもちゃやおやつを隠して探させる
これらは室内での良い運動になる他、飼い主とのコミュニケーションにもなるでしょう。ボールを投げて飼い主のところに持ってこさせる遊びは、慣れていない犬だと最初は難しいかもしれませんが、しつけの一環にもなります。
犬のダイエット成功させるためのポイント
無理なダイエットは禁物
人間のダイエットと同様、犬のダイエットも無理は禁物です。短期間で一気に体重を落とすのは避けましょう。自分自身が無理なダイエットを行った場合、体調の変化に自分自身で気がつくことが出来ます。
しかし、犬は無理なダイエットで体調を崩した場合でも体調不良を訴えることが出来ません。健康になるためのダイエットなのに、逆に体調を崩してしまっては本末転倒でしょう。
犬のダイエットは半年〜1年といった長期スパンで焦らずじっくり進めていきましょう。
困ったときはお医者さんに相談だ
うちの子、もしかして太ってる?と感じたら獣医さんに相談してみるのも方法の一つです。
獣医さんに体重、体調も診察して貰いながらダイエットを進めていくことで健康的なダイエットが可能です。
自分でダイエット計画を組むのが不安な方は獣医さんと相談しながら進めてみてはいかがでしょうか?
犬のダイエットおすすめグッズ
飼い犬を肥満から守るために、食事内容や運動と併せてグッズを使った工夫をすると効果が高まります。
早食い防止食器
犬は早食いをしがちですが、早食いをすると満腹感を感じにくくなります。ゆっくり食べさせることで、少しの量でも満腹感を感じるでしょう。
早食い防止用のフードボウルは、中が複雑な形になっており一度でたくさんの量を食べることを防ぎます。
直径が20センチほどで、大型犬の口にも合うでしょう。
犬用シリコンフリスビー
せっかくドッグランに連れて行ったのに、走り回るどころか地面をくんくん嗅いだり、寝そべってしまうということはありませんか?
1人ではなかなか運動しないという飼い犬には、フリスビーなどの道具を使って遊び感覚で運動させてあげることをおすすめします。
シリコンでできたフリスビーはプラスチック製に比べて空中に舞いやすく、傷もつきにくいのです。
良い運動になるだけでなく、飼い主との信頼関係を作るにも最適な道具です。
ダイエットサプリ
参考URL:yahooショッピング
酵素を使用した犬用のダイエットサプリです。天然素材で無添加にこだわっているため、余計な成分を摂取する心配がありません。米ぬかやナチュラルチーズといった健康的な原料で作られています。
普段与えているドッグフードに少量ふりかけるだけで体重をキープできるため、飼い犬だけでなく飼い主にとっても気軽なダイエット食ではないでしょうか。
肥満は百害あって一利なし
犬も人間と同じように、運動不足や食べ過ぎなどから肥満になってしまいます。肥満になることで、様々な病気を引き起こす確率が高くなったり、ケガをする恐れもあります。
犬が肥満になって良いことは1つもなく、後々犬にも飼い主にも辛い状況が待ち構えているかもしれません。犬を肥満にするのは多くの場合飼い主であり、それを妨げられるのも飼い主です。日頃から飼い犬の体型をチェックし、場合に応じて散歩や運動の量、食事の内容を見直しましょう。
今回お伝えした犬のダイエットのコツを参考に、飼い犬の理想の体重を目指して、健康的な日々を送ってくださいね。