しつけの基本!子犬にとって一番難しい「待て」のしつけ方

子犬のしつけは家族に迎えたその日から始めるべきとされていますが、中でも「待て」のしつけは子犬にとって最も難易度が高いしつけです。元気一杯で遊びたい盛りの子犬にとってほんのわずかな時間でもじっとしていなければならないことは何よりも苦痛だからです。

「待て」のしつけの教え方とその後の活用法を理解するといかにそのしつけが重要かを知ったうえで練習に取り組むことができるでしょう。

「待て」のしつけを教える意味

「待て」のしつけを教える時は、なぜ「待て」をさせるのかを飼い主さん自身がしっかりと理解しておく必要があります。

単に「待て」という合図で子犬が一瞬動きを止めるだけという理解であったり、食事の前には「待て」をさせるべきという漠然としたイメージだけでは子犬自身が混乱してしまい、次第にしつけが曖昧になってしまいます。

「待て」を教える意味は次のような理由があります。

①どのような状況であっても、飼い主の指示に従わなければならないと認識させる為
②食事を与える時に飛びつきを抑制する為
③要求吠えや無駄吠えを抑制する為
④危険を回避する為

どのような状況であっても、飼い主の指示に従わなければならないと認識させる為

まず①の指示に従わせるという意味は、野生の環境で暮らす群れの中で用いられる方法です。群れの中ではリーダーである一匹が獲物を真っ先に食べる事が出来ます。

この時、低い唸り声をあげる事で他メンバーの行動を抑制し、「待て」をさせます。リーダーがその場を離れる事で他のメンバーは獲物に近づく事を許されます。

この習性はペットである犬にももちろん残っているので、リーダーである飼い主が「待て」という指示をだした時は、たとえ目のまえに食事や魅力のあるものがあっても自身の行動を抑制しなければならないという事を身に付けさせるのです。

食事を与える時に飛びつきを抑制する為

②食事の前に「待て」をさせるには、犬の要求が必ずすべて通用するわけではないという事を認識させる為です。目のまえに食事があれば一瞬でも早く欲しいと思うものが犬の特性であり、子犬の時期は特にその要求が強く現れます。

子犬が飛びついたり、吠えたり、興奮することで飼い主を催促し、飼い主はその催促に応じる形で食事を与えるという仕組みが正しい行動ではないと認識させます。

この行動は子犬がまだ小さく簡単にコントロール出来る時期は大目に見る事も出来ますが、子犬が成長し力も強くなってからでは簡単に抑止できない状態になります。次第に飼い主との上下関係も逆転してしまい生活のあらゆる面において不具合が生じるようになります。

要求吠えや無駄吠えを抑制する為

③生後間もない子犬は、人間の赤ちゃん同様に興奮したり、要求があると甲高い声で鳴いて相手に伝えます。この時犬同士の関係性の中では相手に無視をされたり、低い声で唸られる事があり、相手の反応によって要求を声で伝える事の可否を身に付けていきます。

もちろん相手の犬は無条件ですべての要求に応える事はなく、下位者である子犬が生活のルールを覚えていきます。しかし人間が相手の場合、要求に応じる形で行動を起こしたり、時には無条件で要求が通る事もあります。その為ますます子犬の甲高い要求吠えはエスカレートします。

どんなに要求があってもまずは実現する前に一旦冷静さを取り戻すために「待て」をさせます。食事の前、リードを付ける前、玄関を出る前、おやつを与える前、サークルから出す前とすべてのタイミングにおいて一旦「待て」をさせる事で子犬に我慢と冷静さを認識させます。

危険を回避する為

④「待て」のしつけはせっかく習得させたものの、なかなか活用方法が見いだせないという方もいるでしょう。中には長時間「待て」をさせる事を本来の意味と捉え、日々練習をかさねている方もいます。しかし「待て」は実際の生活で最も多用して欲しいしつけです。

「待て」を活用するべきタイミングは、飼い主が何か別の行動をしなければならない時に犬を安全に待機させる為です。例えば散歩中に犬の糞を片付ける場面があります。この時飼い主は当然片手で作業をしている上に、犬から目を離さなければなりません。

片付けの最中にもし犬が自由に行動をし、他の犬にとびかかってしまったり、通行人に飛びついてしまっては思わぬ事故につながります。飼い主自身も咄嗟に力強く引っ張られる事になり転倒するかもしれません。他犬をみると吠えかかってしまう犬の場合は、散歩中に遠くに他犬を見かけた時に、お座りと「待て」をさせて相手が通りすぎるまで待機させるという活用法もあります。

犬は本来お座りの状態で激しく吠える事が出来ません。しっかりと「待て」姿勢を維持することができれば、必然的に無駄吠えを抑制することにつながります。犬連れ可能な飲 食店や施設を利用する場合も同様です。入口ドアの出入りから始まり、飼い主の食事中は静かに「待て」の姿勢を維持することができれば安心して過ごすことができます。

「待て」の姿勢は必ずしもお座りとセットである必要はないので、伏せた状態で「待て」をしてもまるで問題はありません。このような施設では飼い主以外の人から食べ物をもらうことや他人の食べ物に犬が反応してしまうこともあります。そのような場合も「待て」を習得していれば、犬にどのような姿勢で過ごすべきかを的確に指示することが出来、安全に過ごすことができます。

「待て」というしつけをただしく習得出来ていると、様々な場面で活用することが出来、犬の扱いがとてもスマートになる事を実感する事が出来るでしょう。

カウントで教える「待て」のしつけ

やんちゃ盛りの子犬にとって、たとえ数秒でも動きを止めじっとしている事、相手に動きをコントロールされる事はとても苦痛です。その為「待て」のしつけもなかなか覚える事が出来ません。「待て」のしつけは今後の活用法を考えると、決して一瞬芸であってはいけません。飼い主から解除の指示が出されるまでじっと待機をつづける事で初めて意味を持ちます。

子犬のしつけをしていると「待て」を意外にスムーズに憶えたという声が上がりがちです。これは食べ物を目の前にして、上位者からの低い声で指令が出た事に対して野生の本能で待機をしているだけであって本来の意味とは異なります。

飼い主の日ごろとは違う低く、厳しい口調を察知し、食べ物に口を付ける事を躊躇しているだけです。この行動は犬が飼い主を上位者と認識している間は通用しますが、立場が逆転してしまってからはまるで通用しなくなるでしょう。

その為にも「待て」のしつけは正しく教える必要があります。「待て」のしつけの教え方は次のような方法があります。

①食べ物など犬が強く要求をする物を用意する
②お座りやフセなど犬が待機すべき姿勢をさせる
③この状態で「待て」と声を掛ける
④「待て」をしている間は、1から数を数える
⑤数え終えた時点で「ヨシ」と解除の号令をかける

この流れの中で最も大切な点は数を数える事です。数を数え続けている間は「待て」の指示が継続しているのと認識させます。

この認識が出来れば数のカウントがどれだけ長く続いても数えている間は継続をしなければと犬が認識します。もし数えている最中に姿勢を崩したり、立ち上がるようであれば再度「待て」と指示をだし、数を数え続けます。

子犬にとって「待て」は一番苦手なしつけですから、いつ解除されるのかが何より気になるポイントです。このポイントを明確にしてあげると犬自身もスムーズに理解することができます。

またこのカウントに合わせて掌を上下させるという方法もあります。飼い主の掌が上下している間は「待て」を継続しなければならないと認識させる事も出来ます。数え方やサインは飼い主自身のやり易い方法を選択して問題ありません。どのような形であっても子犬に継続を伝える事が出来ればよいのですから。

多頭飼いの場合の「待て」のしつけ

子犬を家族に迎えた時点ですでに先住犬がいる場合、子犬のしつけに手間がかかりつい先住犬の扱いがおろそかになりがちです。しかししつけを成功させるためには子犬ではなく、先住犬を優先した方がよりスムーズです。

「待て」を教える場合も同様で、まず先住犬の日ごろの方法で「待て」をさせます。この時子犬にあえて教え込んだり、子犬が正しく「待て」が出来るまで先住犬を待機させる必要はありません。先住犬がどのような手順で食事をもらっているか、どのような手順でリードを付けているかを子犬が目にする事で自然と身に付けていく事が出来ます。

例えば先住犬がおやつをもらうためにお座り、「待て」をただしくしているときに、隣で子犬が要求吠えをしたり、飛び跳ねている場面があります。この時あえて子犬を叱ったり、お座りを強制する必要はありません。正しい行動が出来ている先住犬にだけおやつをあたえればいいのです。

この時子犬には一切与えず、声もかけません。この行動を繰り返していくうちに、子犬はなぜ自分がおやつをもらないのか、どうすればもらえるのかを理解していきます。子犬が先住犬の行動を真似て、「待て」が出来る様になったらそのタイミングを逃さずにおやつを与えます。この成功体験がもとで子犬は「待て」を習得することができます。

同様に散歩の時にリードの着脱や食事などもすべて先住犬の真似をさせます。じっと待つ事が出来ない、要求吠えをしてしまう時は散歩には同時に連れださず、子犬だけ留守番をさせてもよいでしょう。気がつけば子犬自身が試行錯誤をして成功法を必ず見出してくれます。

このように先住犬がいる場合は先住犬の行動を評価することでとても簡単に子犬のしつけを済ませる事が出来ます。

子犬に「待て」を教える事は、何度も繰り返し練習をさせ、自ら理解させることが大切です。子犬の時期に我慢をすることを習得しておくと、成長後の扱いもとてもスムーズになり、危険や問題行動の回避にもつながるのでしっかりと教えてあげましょう。

まとめ

「待て」はしつけの基本ですが最も難しいしつけのうちの一つです。待ては飼いやすくするためだけじゃなく、危険を回避するためにも重要なしつけです。

最初から上手くしつけは出来ないかもしれません。根気強く続ける必要があります。

今日ご紹介した待てのしつけ方法を参考にして頂き、愛犬との快適で楽しい生活にお役立てくださいね。